
グラファイトデザイン社の人気シリーズに新たに加わった「Tour AD CQ」。近年の高慣性モーメントヘッドとの相性を追求し、圧倒的な「つかまり」と「走り」を実現したこのシャフトは、多くのゴルファーから注目を集めています。
特に、スペック選びの基準となる「振動数」は、自分のスイングに合うかどうかを判断する上で欠かせないデータです。本記事では、ツアーAD CQの特性を深掘りし、数値的なデータからプロの評価、さらには最新ヘッドとのマッチングまで、あなたのシャフト選びに役立つ情報を網羅的に解説します。
記事の内容一覧
- ツアーADCQの使用プロ
- どんなシャフト?
- 評価
- 似たシャフト
- マーク金井
- ツアーADCQ振動数
- HDとFiの振動数
- 合わないのか?
- ステルス2
- ツアーADCQ振動数まとめ
目次
ツアーAD CQの振動数から紐解く最新シャフトの特性と選び方のポイント
ツアーAD CQは、手元側の剛性を高めつつ、中間から先側をスムーズに走らせる「先中調子」のシャフトです。キーワードとなる「ツアー AD CQ 振動数」を確認すると、従来のモデルよりもやや高めの数値が出る傾向にありますが、これは手元剛性の高さに起因しています。本記事では、使用プロの傾向から具体的な振動数データ、さらに「ステルス2」など最新ヘッドとの相性まで、その実力を徹底的に分析していきます。
ツアーADCQの使用プロ
女子プロゴルファーを中心に支持される理由
ツアーAD CQ(Conquer)は、その名の通り「征服」を意味する力強いネーミングですが、実際のツアー現場では、特に女子プロゴルファーからの支持が厚いのが特徴です。女子プロの多くは、男子プロに比べてヘッドスピードが40〜43m/s程度であることが多く、効率よくボールを捕まえて飛ばす性能を求めています。
具体的に使用やテストが報じられたプロとしては、藤田さいきプロなどが挙げられます。彼女たちトッププレーヤーがこのシャフトを選ぶ最大の理由は、「球の上がりやすさ」と「右へのミスを防ぐつかまりの良さ」です。近年のドライバーヘッドは大型化し、慣性モーメント(MOI)が高くなる一方で、ヘッドが返りにくい(振り遅れやすい)という課題がありました。CQは、切り返しで手元がしっかりしているためタイミングが取りやすく、インパクトにかけて先端がスピーディーに走るため、MOIの高いヘッドでもしっかりとボールを捕まえることができるのです。
男子プロやアマチュアへの波及
男子ツアーにおいても、ドローヒッターや、もう少し球の高さを出したいと考える選手がテストを重ねています。男子プロの場合、60g台や70g台の「X」や「TX」といったハードなスペックを使用しますが、CQの「先中調子」という特性は、操作性を重視する選手にとっても武器になります。
アマチュアゴルファーにとって、プロの使用状況は非常に重要な指標です。プロが使っているからといって「難しい」と決めつけるのは早計です。むしろ、女子プロが好むシャフトは、ヘッドスピードが一般的な男性アマチュア(40〜44m/s)に近いことが多いため、非常に参考になります。CQを使用するプロたちは、インパクトでの「押し込み」の強さを評価しており、これが飛距離アップに直結しています。
ツアー現場でのフィードバックと勝利への貢献
ツアーADシリーズは、毎年のように新しいモデルが登場しますが、CQは特に「現代のヘッドにマッチする加速感」が評価されています。プロが試合で使用するということは、単に飛ぶだけでなく、プレッシャーがかかる場面でも「逆球(ドローを狙ってスライスが出る等)」が出ない信頼性があるということです。CQは先端部に高弾性・高強度のカーボン素材「トレカ®M40X」を採用しており、走り系シャフトにありがちな「当たり負け」を極限まで抑えています。この素材の恩恵により、オフセンターヒット時でも球筋が安定し、プロのスコアメイクを支えているのです。
どんなシャフト?
開発コンセプトと「先中調子」の正体
グラファイトデザインのツアーAD CQは、2022年後半に登場したモデルで、カラーリングはゴールドとブラックを基調とした高級感のあるデザインが特徴です。開発コンセプトは「加速感とつかまり」です。これまでのツアーADシリーズの中で、つかまりを重視したモデルとしては「MJ」や「VR」がありましたが、CQはそれらをさらに現代風にアップデートした進化系と言えます。
キックポイントは「先中調子」に分類されます。しかし、単に先が柔らかいだけのシャフトではありません。手元側(グリップ側)の剛性をあえて高めることで、切り返しでの過度なタメを防ぎ、スイングのパワーをダイレクトに先端へと伝達する構造になっています。これにより、ダウンスイングからインパクトにかけて、まるでムチのように先端が鋭く走る感覚が得られます。
採用されている最先端テクノロジー
CQの性能を支えているのは、東レが開発した革新的な素材技術です。
- トレカ®M40Xの採用: シャフト先端部に高強度かつ高弾性の「M40X」を使用。これにより、インパクト時のエネルギーロスを最小限に抑えつつ、鋭い弾きを生み出します。
- マルチアキシャル構造: 複数の方向に繊維を組み合わせることで、スイング中のシャフトのねじれ(トルク)を最適化。走り系シャフト特有の「暴れる感じ」を抑制し、方向性の安定を実現しています。
これらのテクノロジーにより、単なる「走るシャフト」ではなく、「叩ける走り系」という独自のポジションを確立しています。
スイングタイプ別の挙動
このシャフトは、以下のような悩みを持つゴルファーに劇的な変化をもたらします。
- スライスに悩んでいる: インパクトでフェースが開きやすい人でも、シャフトが自動的にターンを促してくれるため、自然なドロー回転がかかりやすくなります。
- 球が上がらない: 先端が動くことでロフト角が増える方向にインパクトを迎えやすく、低スピンでドロップしてしまうミスを防ぎます。
- 振り遅れが気になる: 大型ヘッド特有の、ヘッドが置いていかれる感覚を、シャフトの加速性能が補ってくれます。
スペック展開も非常に幅広く、40g台の「R2」から70g台の「X」まで用意されているため、非力なシニアゴルファーからパワーのあるハードヒッターまで、あらゆる層が「先中の加速感」を享受できる設計になっています。
歴代モデルとの位置づけ
ツアーADの「マトリックス図(性能分布図)」で見ると、CQは明らかに「つかまり(Draw)」および「高打ち出し(High Launch)」の領域に位置します。近年ヒットした「UB」や「DI」が粘り系で左へのミスを嫌うセッティングなのに対し、CQはその対極に位置するモデルです。そのため、フェードヒッターが飛距離を伸ばすためにドローに挑戦したい場合や、弾道が低すぎて損をしているゴルファーにとって、最高の選択肢となります。
評価

加速感とボールの捕まりに対する高い支持
ツアーAD CQに対する評価で最も多く聞かれるのは、「圧倒的な加速感」と「ボールの捕まりの良さ」です。多くの試打インプレッションにおいて、切り返しからインパクトにかけてのスピード感が、これまでのツアーADシリーズの中でも群を抜いていると指摘されています。特に、ヘッドスピードがそれほど速くないアマチュアゴルファーや、大型ヘッドのドライバーで「振り遅れ」を感じている層からは、「右へのミスが激減した」「楽にボールを捕まえられるようになった」と非常に高い評価を得ています。
この「捕まり」の性能は、単にフェースが閉じる動きを助けるだけでなく、インパクト効率の向上にも寄与しています。先端部の剛性をあえて抑えめに設計しつつ、高弾性素材「トレカ®M40X」を採用したことで、当たり負けをせずに力強くボールを押し出すことが可能になっています。その結果、ボール初速が上がりやすく、キャリーを伸ばせるシャフトとして、飛距離アップを目指すゴルファーから絶大な信頼を勝ち取っています。
最新の「高慣性モーメントヘッド」との抜群の相性
近年のドライバーヘッドは、ミスへの寛容性を高めるために慣性モーメント(MOI)を極限まで大きくする傾向があります。しかし、こうしたヘッドは「返りにくい」という特性も併せ持っており、スライサーや振り遅れ気味のゴルファーにとっては、インパクトでフェースが開きやすいという課題がありました。
CQの評価において特筆すべきは、こうした最新ヘッドとのマッチングの良さです。手元側の剛性を高めることで、ダウンスイングでの余計な挙動を抑え、中間から先端がシャープに動く設計が、大型ヘッドの「戻りの遅さ」を見事に補完しています。試打を行った専門家からも「最新のステルスシリーズやパラダイムシリーズといった、慣性モーメントの高いヘッドに装着した際、最もそのポテンシャルを発揮する」という声が多く上がっています。シャフトが自動的に仕事をしてくれるため、無理にリストを使わなくてもスクエアなインパクトを迎えやすいのが最大のメリットです。
弾道の高さとスピン量のコントロール
弾道に関する評価では、「高弾道が打ちやすい」という点が強調されています。先中調子の特性上、インパクトでロフト角が寝る方向に動きやすいため、低弾道に悩むゴルファーにとっては理想的な打ち出し角を確保できます。一方で、スピン量に関しては「適度に入る」という評価が一般的です。超低スピンを謳う「UB」や「DI」と比較すると、CQはキャリーを稼ぐのに必要な最適スピンを維持しやすい傾向にあります。
しかし、この特性はパワーヒッターや元々スピン量が多いゴルファーにとっては、時に「吹き上がり」を感じさせる要因にもなり得ます。そのため、評価は「キャリーを最大化したい人には満点」である一方、「とにかくスピンを抑えて左を消したい人には不向き」という明確な二分化が見られます。自分の欠点を補うためのツールとして、その性格がはっきりしている点も、ギアとしての完成度の高さを示していると言えるでしょう。
振動数データから見るスペック選びの安定性
実際に購入したユーザーからは、フレックスごとの振り心地に一貫性がある点も高く評価されています。40g台から70g台まで幅広いラインナップがありますが、どの重量帯を選んでも「CQらしさ」である手元のしっかり感と先端の走りが損なわれていません。特に、カスタムシャフトに初めて挑戦するユーザーにとって、計測された「振動数」が自分の感性と一致しやすい(=硬すぎると感じにくい)点は、失敗の少ないシャフト選びを支える重要な要素となっています。
似たシャフト
歴代ツアーADシリーズとの比較:MJやVRとの違い
ツアーAD CQの特性を理解する上で、過去のモデルと比較することは非常に有効です。CQに最も近いポジションにあるのは、かつての名作「ツアーAD MJ」や、その後の「ツアーAD VR」です。
- ツアーAD MJとの比較: MJは全体的にしなりが大きく、非常にマイルドな捕まりが特徴でした。これに対し、CQは先端に最新素材を使用しているため、MJよりもインパクト時の「弾き感」が強く、よりシャープな振り心地になっています。MJが「ムチ」なら、CQは「バネ」のような加速感を持っています。
- ツアーAD VRとの比較: VRも捕まりの良いシャフトでしたが、CQに比べるとやや中間部の剛性が低く、全体がしなる感覚がありました。CQは手元をより硬くすることで、現代の重いヘッドでも操作性を損なわないよう進化しています。VRで少し物足りなさを感じていた人にとって、CQは正当な進化系と感じられるはずです。
競合他社モデルとの比較:スピーダーNXグリーン
他メーカーのシャフトでCQとよく比較されるのが、フジクラの「スピーダーNXグリーン」です。どちらも2022年〜2023年にかけて人気を博したモデルですが、その特性には明確な違いがあります。
スピーダーNXグリーンは、中調子に近い挙動で、CQよりも先端側の剛性が高く設定されています。そのため、捕まりの良さという点ではCQに軍配が上がります。一方で、スピーダーNXグリーンは「左へのミスを抑えつつ、適度に飛ばしたい」というニーズに応える設計です。 「とにかく右へのミスを消して、シャフトの走りで初速を出したい」ならCQ、「安定した方向性を保ちつつ、エネルギー伝達効率を高めたい」ならスピーダーNXグリーン、という選び分けが一般的です。CQの方がより「動く」シャフトであり、オートマチックな加速を求める層に適しています。
三菱ケミカル「ディアマナGT」との対比
三菱ケミカルの「ディアマナGT」も、同じく手元剛性を高めた設計ですが、CQとの最大の違いは「挙動の素直さ」です。ディアマナGTは、手元から中間にかけてはCQに近いフィーリングがありますが、先端の動きがCQほど派手ではありません。
ディアマナGTは「操作性」を重視したニュートラルな捕まりを目指しているのに対し、CQは「つかまりの最大化」を明確に打ち出しています。ドローを打ちたい、あるいはスライスを完全に矯正したいと考えるゴルファーにとってはCQの方が効果を感じやすく、弾道を自在に操りたい上級者にとってはディアマナGTの方が扱いやすく感じる傾向があります。
グラファイトデザイン内の他モデルとの関係性
最新のラインナップの中では「ツアーAD HD」とも比較されます。HDは「Hyper Drive」の略で、叩きにいっても左に行かない安定感が売りですが、CQは「叩かなくてもシャフトが走ってくれる」という対照的なコンセプトです。
また、2023年に登場した「ツアーAD VF」はCQとは真逆の「元調子系」であり、低弾道・低スピンを追求しています。このように、グラファイトデザインはCQを「最もつかまる・上がる」ポジションに配置することで、多様なニーズに応えています。似たシャフトを探す際、CQの「先中の鋭さ」に勝るモデルは現在の市場でも非常に稀有であり、唯一無二の存在感を放っています。
マーク金井
ギアの目利きが語る「ツアーAD CQ」の第一印象
ゴルフクラブやシャフトの分析において、忖度のない鋭い批評で知られるマーク金井氏。彼が「ツアーAD CQ」を試打した際の評価は、多くの一般ゴルファーにとって非常に参考になるものです。マーク金井氏は、このシャフトを「先調子系の現代的な進化形」と位置づけています。
多くのゴルファーが「先調子」と聞くと、先端が柔らかすぎて暴れる、あるいは引っかかるというイメージを持ちがちです。しかし、マーク金井氏はCQの「手元の剛性の高さ」に注目しています。彼によれば、CQはグリップ周辺(手元側)がしっかりしているため、切り返しでシャフトが余計なしなりを作らず、ダウンスイングの軌道が安定しやすいと分析しています。この「手元のしっかり感」こそが、単なる先調子シャフトとの大きな違いであり、叩きにいっても左へのミスが怖くない理由であると述べています。
スイングタイプとの相性を鋭く分析
マーク金井氏は、シャフトの性能を単体の数値だけでなく「どんなスイングの人に合うか」という視点で詳細に解説します。CQについては、「自分でタメを作れるゴルファー」よりも、「シャフトのしなりを利用して効率よく飛ばしたいゴルファー」に向いていると評価しています。
特に、リストターンを積極的に使わない現代的なシャロースイングのゴルファーにとって、CQの先端が走る挙動は、ヘッドをスクエアに戻す手助けをしてくれるため、非常に相性が良いと指摘しています。マーク金井氏自身の試打データでも、ボール初速の速さと、サイドスピンが抑えられた安定したドロー弾道が確認されており、「つかまりすぎる」というリスクを最小限に抑えつつ、飛距離を稼げる設計であることを高く評価しています。
「重柔(おもやわ)」のすすめとスペック選び
また、マーク金井氏はスペック選びに関しても独自の視点を持っています。CQは40g台や50g台のラインナップも充実していますが、彼は「無理に硬いスペック(SやX)を選ばず、一つ下のフレックスを選んでシャフトのしなりを十分に活用すること」を推奨することが多いです。
CQの場合、手元が硬い分、振動数(cpm)の数値自体は高めに出る傾向がありますが、実際に振ってみると中間から先が動くため、数値ほどの硬さは感じにくいという特徴があります。マーク金井氏はこの点に触れ、「計測上の硬さに惑わされず、実際に振った時のタイミングの取りやすさを重視すべき」とアドバイスしています。彼が提唱する「シャフトに仕事をさせる」ゴルフを体現するのに、CQはまさにうってつけのモデルであると言えるでしょう。
ツアーADCQ振動数
シャフトの硬さを客観的に示す指標である「振動数(cpm)」。ツアーAD CQの振動数を測定すると、同重量帯の他のモデルと比較して、やや高めの数値が出る傾向にあります。
振動数データが示す「手元剛性」の実態
一般的に、60g台のSフレックス(6S)であれば、260cpm前後が平均的ですが、CQの場合は装着するヘッドや長さにもよりますが、260cpm中盤から後半を記録することもあります。
この数値だけを見ると「CQはハードなシャフトなのか?」と思われがちですが、これには明確な理由があります。振動数は主に手元側の剛性に強く影響を受けます。CQは「先中調子」でありながら、手元側を意図的に硬く設計しているため、数値が高く出るのです。しかし、実際にスイングしてみると、中間から先端にかけてのスムーズなしなりがあるため、振った感触は数値以上に「しなやか」で「扱いやすい」と感じるのが、このシャフトの面白いところです。
フレックス別の振動数目安(45.25インチ換算)
具体的な振動数の目安を、一般的なドライバー(ヘッド重量約200g)に装着した場合で見ていきましょう。
- 5R1/R2: 約235〜240cpm(一般的な純正シャフトのSR〜S相当)
- 5S: 約250〜255cpm(しっかり叩ける50g台)
- 6S: 約260〜265cpm(アスリートゴルファーのスタンダード)
- 6X: 約270cpm以上(ヘッドスピード48m/s以上のハードヒッター向け)
これらの数値からわかるのは、CQは「軽硬(かるかた)」のセッティングにも対応しやすいということです。例えば5Sであっても、手元の剛性が高いため、ヘッドスピードが速い人が振っても頼りなさを感じにくくなっています。
振動数と飛距離効率の関係
CQの振動数特性は、飛距離効率を最大化するようにチューニングされています。手元が硬いことで、切り返しのパワーロスを防ぎつつ、先端がしなり戻るスピードを速めています。この「しなり戻りの速さ」が、インパクトでのロフト角を適正化し、ボール初速をアップさせます。
多くのフィッターが指摘するのは、「振動数が高いのに球が上がる」という不思議な感覚です。通常、高振動数のシャフトは球が低くなりやすいのですが、CQは先端の動きがそれをカバーしています。自分の現在のシャフトの振動数を把握している方は、CQに替える際、同じcpm数値を目指すよりも、一つ柔らかいフレックスで「同じような振り心地でより捕まる」セッティングを狙うのが、失敗しないコツと言えます。
装着ヘッドによる振動数の変化

忘れてはならないのが、ヘッド重量による数値の変動です。最新の「ステルス2」や「パラダイム」などの高慣性モーメントヘッドは、重量が重めに設定されていることが多いです。重いヘッドを装着すると、物理的に振動数は数cpm低下します。CQをこれらの重量ヘッドに合わせる場合、手元の剛性が高いおかげで、数値が下がっても「手元がグニャつく」ような不快感がなく、シャープな振り抜きを維持できます。これこそが、CQが最新ヘッドと相性が良いと言われる「数値上の裏付け」なのです。
HDとFiの振動数
ツアーAD HDとの振動数比較と特性の違い
ツアーAD CQと比較検討されることが多いのが、同じ「第3世代」以降のモデルである「ツアーAD HD(Hyper Drive)」です。CQとHDは、どちらも最新のカーボン素材を使用していますが、その設計思想と振動数データには明確な差異があります。
まず振動数についてですが、同じ「6S」スペックで比較した場合、数値そのものはCQの方がわずかに高く出る傾向があります。これは前述の通り、CQの手元剛性が非常に高く設計されているためです。対してHDは、手元から中間部にかけて適度なしなりを持たせた「中調子」寄りの設計です。実測値では、CQ(6S)が約263〜267cpm程度であるのに対し、HD(6S)は約258〜262cpm程度に収まることが多いです。
この数値の差がもたらす振り心地の違いは顕著です。HDは「叩きにいってもシャフトが暴れない、粘り強い安定感」を重視しており、スイング中のシャフトの挙動が非常に緩やかです。一方のCQは、高めの振動数が示す通り手元がカチッとしており、そこから先端が鋭く弾くため、HDよりも「スピード感」を強く感じます。HDはフェードヒッターや左へのミスを嫌う人が好む振動数特性であり、CQはドローで飛距離を伸ばしたい人が好む特性と言えます。
FW専用シャフト「Tour AD F」シリーズ(Fi)との相関
質問に挙がる「Fi」というキーワードは、多くの場合、フェアウェイウッド専用シャフトである「Tour AD F」シリーズ(特にその後継や関連カスタム)を指します。ドライバーにCQを装着した場合、フェアウェイウッドに何を合わせるべきかという問題は、セッティングの重要課題です。
フェアウェイウッド専用の「Tour AD F」は、芝の上からボールを拾い上げるために、中間部から先端にかけての動きを最適化しています。振動数で言えば、FW用はドライバー用よりも重量が増えるため、一般的には同じフレックスでもやや高めの数値に設定されます。
- DRにCQ 5Sを使用している場合: FWには「F-55」や「F-65」のSを合わせるのが定石です。
- 振動数バランス: CQは手元が硬いため、FW用シャフトも手元が緩すぎないものを選ばないと、切り返しのタイミングがバラバラになってしまいます。
CQのドライバーからFWへの流れを作る際、FW用シャフトの振動数がドライバーより+10cpm程度(60g台の場合)高くなっていると、セット全体での振り心地が整います。CQ特有の「先中の走り」をFWでも再現したい場合は、あえてFW専用シャフトではなく、ドライバー用のCQを0.5〜1.0インチ程度チップカットして装着する選択肢もあります。これにより、振動数を高めつつ、地面にあるボールを強く弾き飛ばすCQ特有の挙動をFWでも活かすことが可能になります。
振動数管理によるセッティングの重要性
「HD」と「CQ」、そして「FW用」の振動数を比較して見えてくるのは、グラファイトデザインが意図的に「剛性分布(EI特性)」を変えることで、ユーザーに明確な選択肢を与えているということです。 数値(cpm)だけに囚われると、「CQはHDより硬いから難しい」と誤解してしまいますが、実際には先端の動きがCQの方が大きいため、球の上がりやすさや捕まりやすさはCQが勝ります。自分のスイングが「手元でタイミングを取るタイプ」なのか、「先端の走りを借りて弾くタイプ」なのかによって、この振動数データの意味合いは大きく変わってきます。
合わないのか?
CQが「合わない」と感じるゴルファーの特徴
ツアーAD CQは非常に高性能なシャフトですが、万能ではありません。特定のタイプにとっては、その「走り」や「つかまり」が牙を剥くことがあります。まず、CQが合わない可能性が高いのは「極端なフッカー(左へのミスが多い人)」です。 CQの最大の武器は先端の加速による捕まりです。しかし、元々リストターンが強く、放っておいてもボールが左に巻いてしまうタイプの人がCQを使うと、シャフトの動きと自分の動きが同調しすぎてしまい、制御不能な「チーピン」が発生するリスクが高まります。
また、「タメが極端に強いヒッター」も注意が必要です。CQは手元が硬いため、切り返しでグイッと手元がしなる「粘り」を求める人には、棒のように感じられてタイミングが取りづらい場合があります。手元がしならないと、スイングのリズムが早くなってしまい、打ち急ぎの原因になることもあるからです。
ターゲット層とミスマッチの解消法
では、逆にどのような人が「合わない」という評価を覆せるのでしょうか。それは「重いヘッドを使いたいが、球が上がらず右に抜ける」という悩みを持つ人です。 もしCQを使ってみて「合わない(飛散する)」と感じた場合、以下のチェックを行ってみてください。
- フレックスが硬すぎる: 振動数が高めに出るため、いつもの「S」が実はオーバースペックになっている可能性があります。「R」や「SR」に落とすことで、中間部のしなりが感じられるようになり、一気に「合う」シャフトに変貌することがあります。
- ロフト設定との不整合: CQは球を上げる力が強いため、ロフト角の大きいヘッド(10.5度以上)に合わせると、スピン量が増えすぎて吹け上がってしまうことがあります。この場合は、ロフトを8.5度や9度といったストロングな設定のヘッドに合わせることで、強弾道ドローを手に入れることができます。
慣れと調整:スイングへの影響
CQは「シャフトが勝手に仕事をする」タイプです。そのため、自分で一生懸命フェースを返そうとする「操作派」のゴルファーには、当初違和感が生じます。この違和感を「合わない」と切り捨ててしまうのはもったいないかもしれません。 最新の大型ヘッド(MOI 5000g・cm²超えのモデルなど)を使いこなすには、ある程度シャフトにヘッドを戻してもらう必要があります。CQを使っていて「タイミングが合わない」と感じる場合は、手の動きを静かにし、体のターンだけで振るように意識を変えると、シャフトの性能がピタリとハマる瞬間が訪れます。
フィッティングで見極める「拒絶反応」の正体
最後に、物理的な「重さ」との兼ね合いです。CQは40g台から用意されていますが、実は「軽いスペックを速く振る」ことで真価を発揮する側面があります。普段60g台を使っている人が、CQの50g台をテストすると、振動数は維持しつつスピードだけが上がるため、好結果につながることが多いです。 「合わない」と感じた時は、スペック(重量・硬さ)の選択が間違っているだけで、コンセプト自体は現代の多くのゴルファーに必要な要素を網羅していることを忘れてはいけません。
ステルス2
最新ヘッド「ステルス2」シリーズとの相性分析
テーラーメイドの「ステルス2」シリーズは、カーボンフェースの進化により高い初速性能を誇る一方、前作以上に「ミスへの寛容性(慣性モーメント)」が向上しています。しかし、慣性モーメントが高まると、どうしてもヘッドの返りが緩やかになり、右へのプッシュアウトや捕まりきらないスライスを警戒する必要が出てきます。ここで「ツアーAD CQ」の出番です。
ステルス2の標準的な特性は、低スピンで力強く飛ばすことにありますが、球を上げるためにはある程度のヘッドスピードや技術が求められます。CQを装着することで、先中調子のしなり戻りがヘッドを理想的なタイミングで加速させ、ステルス2の「返りにくさ」を完璧に相殺してくれます。実際に多くのフィッターが、ステルス2を「より実戦向けで捕まりの良い仕様」にするための第一候補としてCQを挙げています。
モデル別・CQとのマッチングガイド
ステルス2シリーズの3つのヘッドに対し、CQがどのような恩恵をもたらすかを具体的に解説します。
- ステルス2(スタンダード): 最もバランスの良い組み合わせです。やや操作性を残しつつ、オートマチックにドローを打ちたい層に最適です。CQの振動数が手元で安定感を作りつつ、インパクトでヘッドを押し込んでくれます。
- ステルス2 HD(ドロータイプ): 「捕まり×捕まり」の最強コンボです。絶対にスライスしたくない、とにかく右が怖いゴルファーにとって、これ以上のセッティングはありません。驚くほど簡単にハイドローが打てるようになります。
- ステルス2 PLUS: セレクトフィットストア限定の低スピンモデルですが、これを使いこなしたいが球が上がらないというゴルファーにCQは救いとなります。PLUSの低スピン性能とCQの高打ち出し特性が合わさることで、理想的な「高打ち出し・低スピン」のビッグキャリーが実現します。
振動数から見るステルス2への装着時の注意
ステルス2のヘッド重量は、スリーブ込みで約200g前後と比較的高荷重です。この重いヘッドをCQに装着すると、手元剛性が高いCQであっても、振動数は設計値よりわずかに(2〜3cpm程度)低く出ることがあります。 しかし、CQの「トレカ®M40X」による先端剛性の高さが、ヘッドの重さに負けない強さを持っているため、数値上の振動数が低くなっても「振り遅れ」や「当たり負け」を感じることはほとんどありません。むしろ、ヘッドの重みを利用してシャフトを大きくしならせ、その反発力で飛ばすという理想的なエネルギー伝達が可能になります。ステルス2のカーボンフェースが持つ打感の柔らかさと、CQの鋭い弾き感は、感性の面でも非常に高い相性を示します。
ツアーADCQ振動数まとめ
スペック選定の最終チェックポイント
これまで解説してきた通り、ツアーAD CQの振動数は「手元剛性の高さ」を反映し、数値上はやや硬めに出るのが大きな特徴です。しかし、その数値に臆することはありません。CQの真の価値は、高い振動数がもたらす「切り返しの安定感」と、先中調子がもたらす「インパクトの加速」の融合にあります。
記事の内容を振り返り、CQを選ぶ際の振動数に関する重要事項をまとめます。
- 数値に惑わされない: 6Sで260cpmを超えていても、先端が動くため実際の振り心地は数値ほどハードではありません。
- 手元の安心感: 振動数が高い(=手元が硬い)ことで、ダウンスイングでのシャフトの「暴れ」が抑えられ、ミート率が向上します。
- 最新ヘッドとの連動: ステルス2やパラダイムのような重い・返りにくいヘッドを装着してこそ、CQの加速性能と振動数設計が活きてきます。
失敗しないためのフレックス選び
もしあなたが現在、中調子や元調子のシャフトで255cpm(5S相当)を使っているなら、CQでも同じ「5S」を選んで問題ありません。数値が数ポイント上がったとしても、それは「手元のしっかり感」としてポジティブに働きます。 逆に、もし現在「先調子」のシャフトを使っていて、もう少し安定感が欲しいと感じているなら、CQはまさに理想のアップデート先です。振動数データが示す「手元の硬さ」が、先調子特有の不安定さを解消し、一本筋の通った鋭い走りを約束してくれます。
ツアーAD CQが切り拓く新しいゴルフ
「ツアーAD CQ 振動数」というキーワードから見えてきたのは、単なるスペックの数値ではなく、グラファイトデザインが現代ゴルファーの「捕まえたい、上げたい、でも安定させたい」という切実な願いに応えるために緻密に計算した設計の妙です。
金色のコスメティックが輝くこのシャフトは、あなたのドライバーショットに「征服(Conquer)」という名の圧倒的な自信を与えてくれるはずです。振動数という客観的なデータを味方につけ、自分に最適なスペックを手にしたとき、あなたの飛距離性能は間違いなく次のステージへと進化します。最新のテクノロジーが詰まったCQで、コースの右サイドへの恐怖を過去のものにし、フェアウェイセンターへ突き抜けるハイドローをその手で体感してください。





